〜熱視点―新年号作品より〜
都丸ゆきお選
テーマが決まらぬままに色々選んでみました。
茜の空へ籾殻焼く煙すこし崩れ
伊藤 三枝
私達にとっては懐かしい故郷の風景で、風のない日の籾殻焼、真っ直ぐ昇った煙が少したなびいた様子、ありありと見えます。
柏手を見よう見まねの七五三
稲垣 良三
五七五ですが七五三の可愛らしさで動きが感じられますね。
句会を伺う猫遠赤外線のマットの上
岡部 真澄
昔なら猫はコタツと相場が決まっていましたが、さすが現代のペット事情を上手く詠んでいらっしゃる。
切り替えスイッチは真珠のピアス
川原 幸子
お出かけは楽しかった事でしょう。さあここからは日々の生活かお仕事か八ミリ玉の真珠のピアスを外してモードの切り替えですね。
目ざしみな頭そろえて望郷か
熊谷 従子
金子みすずじゃないけれど、目ん玉刺されてがん首揃えて想うは親か兄弟か、それとも生まれ育ったあの海か、可愛そうですね。
番茶の茶柱大きく立った誰か来る
後藤 明良
寒い北海道で熱いお茶をすする、人恋しさも解りますね。茶柱が立った事を誰か人が来ると思うこと自体、厳しい自然環境の中での生活がうかがわれます。
干柿の色変ってゆく一日の短さ過去となる速さ
佐藤良三郎
残念ながらお若い時と比べ、お年を召さるに従い時の経つのは早いと私も日々感じております。でもその年月があればこそ干柿の色の変わり様を時の流れと詠めたと思います。
秋時雨オーイとしか呼ばない古女房
田中 穂
嫁して六十年妻の皹見てしまう
〃
二〇〇八年に生まれた子が二〇六八年に一緒に暮らしていることになると考えると凄い素晴らしいことで、皹を見てしまったという優しさがひしひしと感じられます。
事運ばない日垂れ込めた厚い雲のせい
谷口三和子
毎日毎日一生懸命生きているんですから、厚い雲のせいにしてたまにはゆっくりリラックスして下さい。雲は怒りませんから!
スカートのボタンが飛んで熟女なる
山鹿 晴代
誰もウエストが?なんて思ってないです。スカートが少しきつかっただけですから気にしない気にしない。
コウモリに見つめられ僕さかさま
湯原 幸三
世の中少し斜めに見ると面白かったり、いい句が出来たり、真実だったりするけれど逆さまに見るとどう見えるのかな。
木の葉を集めて夢に投げつけてやる
青空 信吾
誰もが小さい時には小さいなりに、若い時は若いなりに夢と希望を持って人生に立ち向かっていくのだと思うのですが、それが上手く行かない方が現実には多くて、まして現代のような難しい時代に生きる我々の心の叫びが聞えてくるような作品で心を打たれました。
愛情が底を尽いたと去る貴方
青空 陽子
まるでテレビドラマの中の決めぜりふのようですが、五七五に纏め完結に仕上がりました。